水分補給計算機のしくみ
RunDida水分補給計算機は、体重・予定走行時間・現在の気象条件・運動強度から、ラン前・ラン中・ラン後の3段階パーソナル補給プランを算出します。計算のコアは発汗率の推定で、体重70kg・中強度ランの基準値0.8L/時を出発点とし、運動生理学の研究で検証された係数で個人条件に合わせてスケーリングします。
発汗率が決まったら、ACSM(米国スポーツ医学会)とIOC(国際オリンピック委員会)のガイドラインを適用します。ラン前補給は5〜7mL/kg、ラン中は発汗量の70〜80%を目標に400〜800mL/時の安全範囲内でクランプ、ラン後は150%補充ルールでリカバリーします。ツール内に電解質の簡易アドバイスを表示しますが、時間ごとのナトリウム摂取量・塩分タブレット・梅干しなどの詳細プランが必要な方は専用の電解質&ナトリウム損失計算機をご活用ください。
発汗と体液バランスの生理学
発汗はランニング中の体温調節の中心メカニズム。汗1Lの蒸発で約580kcalの熱を放出します。個人差は大きく0.3〜3.0L/時超の幅があり、体格・フィットネス・暑熱順化の進み具合・遺伝で決まります。よく鍛えられたランナーほど早く、多く汗をかき始める——これは冷却効率を高めるための生理的適応で、決して体力がない証拠ではありません。
補給プランで最も重要な数字は体重2%ロス。ここを超えると血漿量が減り始め、心拍ドリフト・ペース失速・胃腸のシャットダウン(いわゆる「内臓の失速」)が連鎖的に起こります。ラン中給水の目的は失った水分を全部戻すことではなく、フィニッシュまで累積2%以内に留めることです。
距離別の水分補給の目安
以下は体重70kgのランナーが気温15〜20℃で走る場合の基本値。気温25℃以上・湿度60%以上では15〜25%上乗せし、個人の発汗率測定後はそれに合わせて調整してください。
5K・10K:レース中の給水よりレース前の準備が本体。スタート2〜3時間前に300〜500mL、レース中は基本的に不要です。30〜50分では胃腸が十分な量を吸収できないため、中間給水所で1口取るのは気分転換程度と考えてください。
ハーフマラソン:総量400〜700mL。3〜5kmごとの給水所で100〜150mL(紙コップ半分〜2/3)を目安に取ります。都市型の大会は給水所が密なため、ハンディボトルは基本不要。出場する大会の給水所地図を事前に確認しておきましょう。
フルマラソン:総量1200〜2400mL。各給水所で150〜200mL、90分経過後からは1時間あたり200mgのナトリウムも並行補給。大会本番と同じスポーツドリンク(アクエリアス・ポカリ・MAGMAなど)を事前に2回以上の30km走で試しておくことが必須です。
ウルトラマラソン:補給が完全に戦略の一部に。日中の暑い時間帯は500〜900mL/時、水とスポーツドリンク・ゼリーを交互、エイドでは固形食(そうめん・おにぎり・バナナ)と水分を組み合わせ、クルー合流地点で体重を測り直してプランを修正します。
前日準備とレース当日の実戦テクニック
レース週:4〜5日前から毎日の水分量を意識し、尿の色を1日中レモネード色にキープ。過剰に飲まないこと——目標は定常状態であり貯水ではありません。前日は普段より500〜1000mL上乗せし、食事で塩分を少し多めに取って水分をとどめやすくします。
レース当日朝:スタート2〜3時間前に400〜600mLの白湯またはスポーツドリンク、その後はいったん停止。スタート15〜20分前に150〜200mLの最終補給。この順序ならスタートブロック入りの前にトイレを済ませられ、走行中に膀胱が張ることもありません。
給水所テクニック:紙コップを受け取ったらコップの口をV字に折る→速歩きに5〜10秒落とす→2〜3口で飲み干す→空コップをゴミ回収ネットへ。初めて飲むドリンクは絶対に本番で試さない。試していない銘柄しか提供されない給水所では水を選ぶのが鉄則です。
リカバリー:フィニッシュ後2〜4時間以内に、失った体重1kgにつき1.5Lの水分を、味噌汁・梅干しおにぎり・経口補水液など塩分源とセットで補給します。完走後6時間以内のビール・日本酒など大量飲酒はリカバリーを遅らせるため、尿が完全に薄い黄色に戻ってから楽しみましょう。
参考文献
- (2007). Exercise and Fluid Replacement (Position Stand). Medicine & Science in Sports & Exercise.
- (2011). Fluid and Electrolyte Needs for Training, Competition, and Recovery. Journal of Sports Sciences.
- (2015). Statement of the 3rd International Exercise-Associated Hyponatremia Consensus Development Conference. Clinical Journal of Sport Medicine.