ウェーブライトとは?記録更新を支える光と公平性
ウェーブライトは、設定ペースをトラック内側の光で示す電子ペーサー。人のペースメーカーとの役割の違い、記録への関わり、公平性をめぐる議論をたどります。
ポイント
- 光は設定されたペースの目印です。 内側のLEDが順に点灯し、動いて見えます。選手の余力を測っているわけではありません。
- 光も人もペースを示せます。 ただし、光は人のペースメーカーのように風よけにはなりません。
- ルール上の許可と、時代を超えた比較は別です。 記録が有効でも、異なる条件をどう評価するかは議論できます。
先頭の選手が離れても、光は進みます
2020年10月7日、バレンシアでジョシュア・チェプテゲイは10000mを26分11秒00で走り、ケネニサ・ベケレの世界記録を更新しました。ニコラス・キメリが先頭を譲った後も、トラック内側にはペースの目印が残っていました。キメリ自身も、その後レースを完走しています。
ウェーブライトは、内側に設置したLEDを順に点灯させる電子ペーサーです。光の列が設定ペースで進むため、選手だけでなく観客にも、目標に対して先行しているか、遅れているかが見えます。示しているのは設定されたペースであり、選手の疲れや余力ではありません。

ペース換算やラップタイム表で表す時間を、走路上で見える形にした仕組みです。
光があっても、人のペースメーカーが走る理由
人のペースメーカーはリズムを作り、後ろの選手の風よけにもなります。空気抵抗を減らす役割は、光には果たせません。一方、人は疲れますし、ラップの速さがずれることもあります。

光なら、プログラムされたペースを最後まで示せます。ただし、選手の状態を見て判断する相手ではありません。選手にとって速すぎるペースが、光によって楽になるわけでもありません。人のペースメーカーが同じ光を見ながら先導することもできます。
バレンシアの公式レポートにも、チェプテゲイが6km目でややペースを落とし、その後上げ直した様子が記されています。目印があっても、走り続けるのは選手です。
記録は有効。それでも公平性が問われるのは?
ベケレも共著者に名を連ねる2024年の論考は、技術による継続的なペース情報が、過去との比較条件を変えたと論じました。著者らは、技術によるペース補助を使った記録を区別して示す案を出しています。
これに対し、GrannetiaとHoogkamerは、ストップウォッチ、場内時計、コーチの通過タイムの声かけも同じ流れにあると反論しました。同じレースの選手が光を共有できる点も挙げています。この反論は、同じレースで目印を共有できることと、過去の技術からの連続性の両方を論じています。
2024年の反論では、著者GrannetiaがWavelight社から業務を受託していると開示されています。両論とも意見を示した文章で、何秒の効果かを測る実験ではありません。レーシングシューズの技術も変わる中で、記録の短縮を光だけの成果とは言えません。
参考文献
- (2020). Cheptegei and Gidey break world records in Valencia. World Athletics.
- . WaveLight’s Technology Keeps Setting a New Pace in Track & Field. Sports Business Journal, reproduced by Wavelight Technologies.
- (2024). Technological advances in elite sport: where does one draw the line?. Journal of Applied Physiology (Viewpoint).
- (2024). WaveLight Technologies’ lights are the fair 21st century’s equivalent of the stopwatch. Journal of Applied Physiology (Letter).
- (2026). Competition Rules & Technical Rules, 2026 edition. World Athletics.