ビーツジュースはマラソンに効く?量とタイミング、どこで買える
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ビーツジュースはマラソンに効く?量とタイミング、どこで買える

研究で使われた量は硝酸塩6mmol=372mgを3日以上。ただし80研究の統合解析では、鍛えたランナーと女性では効果が確認されていません。市販品の含有量差と入手先まで。

ポイント

  • 用量がこの話の全部です — 硝酸塩 6 mmol(372 mg)を1日あたり、3日以上。180件の原著研究を束ねたアンブレラレビューが示した境界です。「ビーツジュースを1杯」は用量ではありません。
  • 効く人は限られます — 80研究の統合では全体でも d = 0.174 と小さく、VO2max 65 mL/kg/分以上の持久系アスリートでは効果が確認されませんでした(d = 0.021、P = 0.745)。しかも原著試験は13人・14人・10人といずれも男性のみで、2つの独立したメタ解析が女性での効果を探し、見つけていません。
  • 製品間の含有量は約50倍違います — 2019年に24製品を実測した研究では、同じ量を摂るのに市販ジュースで 160 mL から 1.2 L 近くまで開きがありました。粉末は6製品とも含有量を公表していません。
  • 殺菌系マウスウォッシュで経路が切れます — 口の中の亜硝酸生成が90%、血漿の亜硝酸が25%減ります。ローディング中とレース当日の朝は使わないでください。
  • 研究の量は ADI の1.4〜1.9倍です(本文で引用した試験が実際に使った 8.4 mmol なら約2.0倍) — ただしその ADI は食品添加物として設けられた数字で、設定した委員会は利益を評価していないと明記しており、EFSA は全摂取源を合わせれば平均でも全年齢層が ADI を超えると書いています。結論は「安全」でも「危険」でもなく、短期の効果の証拠のほうが長期の安全性の証拠より強い、です。

「ビーツ ランニング」で検索すると、出てくるのはイヤホンばかりです。日本語の「ビーツ」はヘッドホンの Beats と同じカタカナなので、運動の文脈で調べようとしても検索が成立しません。野菜のほうを調べたいときは「ビーツ マラソン」か「ビートルート」を使ってください。この置き換えだけで結果が入れ替わります。

もう一つ、日本でのビーツの立ち位置。多くの人にとってビーツは「ボルシチに入っている赤い野菜」であって、持久系のサプリメントではありません。ところが国際オリンピック委員会の2018年のコンセンサス声明は、硝酸塩を数少ない「良い証拠があるもの」の一つに挙げています。名前が挙がっているのは、カフェイン、クレアチン、特定の緩衝剤、そして硝酸塩だけです。

ただし効果は小さく、しかも全員に出るわけではありません。80件の研究を統合した解析では効果量は d = 0.174 で、著者自身が「objectively small」と書いています。そして2つのグループでは効果そのものが確認されませんでした。よく鍛えた持久系アスリートと、女性です。だから本当の問いは「効くかどうか」ではなく、「自分に効くのか、実際に何ミリグラム必要なのか」になります。

この話は用量が全部です

ポイント:目安は硝酸塩 6 mmol(=372 mg)を1日あたり、3日以上続けて。硝酸塩は 1 mmol = 62 mg です。ミリグラムもミリモルも書かずに「ビーツジュースを1杯」とだけ書いてある助言は、プロトコルではありません。

この数字の出どころは、20件の系統的レビュー・180件の原著研究・2,672人分を束ねたアンブレラレビューです(Poon ら、Sports Medicine、2025年)。疲労困憊までの時間が改善し(SMD 0.33、95% CI 0.19-0.47)、1日あたり最低 6 mmol(372 mg)を3日より長く続けるという条件を満たしたときに、改善がはっきりしたと報告しています。

同じレビューで有意だったのは、総走行距離(SMD 0.42)、筋持久力(SMD 0.48)、最大パワー(SMD 0.25)、最大パワー到達時間(SMD -0.76)。それ以外のパフォーマンス指標はいずれも有意差なし(all p > 0.05)でした。

結果と一緒に、著者自身の品質評価も読んでください。含まれたレビューの多くは、AMSTAR-2 という品質評価尺度で「低い」から「きわめて低い」の範囲だった、と書かれています。批判する側ではなく、レビューを書いた本人たちの評価です。

もう一つ正直に書くと、6 mmol は下限であって目標値ではありません。実際に何かを見つけた試験の多くはそれより多く使っています(後述の市民ランナー2試験は 8.4 mmol/日)。逆に 7 mmol 前後を使った試験は、よく鍛えた選手で何も見つけられませんでした。

372 mg を食べ物で言うと

硝酸塩は硝酸塩です。ビーツがこの研究分野を独占しているのは、含有量が一番だからではありません。製品を実測した研究チームの言葉を借りれば、ビーツは「are readily juiced」(ジュースにしやすい)から。2026年の野菜レビューははっきり書いています。よく食べられている野菜、とくに葉物や茎の野菜には、同等かそれ以上の硝酸塩が含まれている、と。日本のスーパーで普通に買えるほうれん草も、密度としては同等以上です。

生野菜の硝酸塩量と、372〜496 mg に届く量
野菜(生・生重量)100 g あたりの硝酸塩用量に届く量
ビーツ250〜400 mg93〜198 g(中サイズ1〜2個)
ルッコラ300〜600 mg62〜165 g
ほうれん草250〜500 mg74〜198 g
レタス100〜400 mg93〜496 g
セロリ150〜250 mg149〜331 g
アブラナ科(キャベツ・ケール・ブロッコリー・カリフラワー)50〜250 mg149〜992 g

この表には制限が3つあります。数値は1本の総説が示した幅で、ほかの文献はビーツについてもっと低い値を出しています。生の状態・生重量にのみ当てはまり、加熱・保存・ジュース化はすべて数値を動かします。そして、水分量から逆算して粉末の含有量を出すことはできません。脱水でどれだけ失われるかのデータが公表されていないからです。

幅が広いのは計測が雑だからではなく、土壌の窒素と保存条件が本当に効くからです。同じ商品でもロットによって変わる理由も同じです。レース週ではなく普段の食事に落とし込む話はランナーの食事管理ガイドにまとめています。

飲むのはスタートの2〜3時間前

原著研究のプロトコルはおおむね運動の2〜3時間前でした。市民ランナーの2試験は2時間前、よく鍛えた選手の試験は2.5時間前です。第三者による製品検査でも、多くのビーツ製品で血漿の亜硝酸がピークになるのは摂取の2〜3時間後と報告されています。

つまり、最後の1回はスタートの2〜3時間前に置くのが証拠のある位置です。摂取から1時間の時点では、血漿の亜硝酸はまだピークに達していません。多くのレースでは朝食と同時か、その直後になります。起床から逆算するならマラソン当日の逆算ツール、その時間帯に何を食べるかはレース前食事プランナーが使えます。

効く人と、効かない人

基準になるのは80件の研究を統合した解析です(Senefeld ら、Medicine and Science in Sports and Exercise、2020年)。全体の効果量は d = 0.174(95% CI 0.120-0.229、P<0.001)で、著者はこれを客観的に小さいと評しています。はっきりした運動能力の向上が見えた集団も限定的で、原文の表現では「日常的に運動している、若く健康な男性」です。

見出しの数字より大事なのは、3つのサブグループ結果のほうです。

  • 女性のみを対象にした研究では効果が確認されず(n = 6、d = 0.116、95% CI -0.126 〜 0.358、P = 0.347)。
  • よく鍛えた持久系アスリート(VO2max 65 mL/kg/分以上)でも確認されず(n = 26、d = 0.021、95% CI -0.103 〜 0.144、P = 0.745)。
  • 吸入酸素濃度(低酸素か常酸素か)によって効果は変わらない。

すでに速い人には、たぶん効きません

1つの試験を近くで見ると、この「効果なし」がどう見えるかが分かります。よく鍛えた男性10人(VO2max 66 ± 7 mL/kg/分、10 km のベストは 36 ± 2 分)が、約 7 mmol を試験の2.5時間前に飲みました。血液は理論どおりに反応しています。血漿の亜硝酸は 61 から 473 nmol/L へ上がりました(P<0.001)。パフォーマンスはついてきませんでした。

疲労困憊までの時間は差なし(P=0.5)、10 km のタイムトライアルも差なし(P=0.6)。出た差は11秒でしたが、研究者が事前に決めていた「意味のある最小の差」は51秒で、そこに届いていません。10人のうち「有益かもしれない」変化が出たのは3人だけでした。これは「効果がない」という結果であって、「逆効果」ではありません。推定値はどちらもわずかに硝酸塩寄りで、ただ意味を持たなかっただけです。

この試験には注意点が1つと、その解除条件が1つあります。試験は模擬高地で行われ、結論文も「常圧低酸素下では」という限定で終わるので、単体では平地について何も言いません。ただし上の80研究の解析が「酸素濃度で効果は変わらない」と示していて、その 65 mL/kg/分 という境界がこの選手たちの 66 とちょうど重なります。2つを合わせれば、この結論は平地にも持ち込めます。

根拠になった試験は、全員男性です

ここははっきり書きます。このページで引用しているビーツの原著試験は、すべて男性のみです(13人、14人、10人、いずれも男性)。上で書いた用量のプロトコルは、男性で確立されたものです。

そのうえで、2つの独立したメタ解析が女性での効果を探し、見つけていません。80研究の解析は「女性のみを対象にした研究では確認されなかった」(P = 0.347)。硝酸塩とポリフェノールを扱った118研究の解析は「女性では硝酸塩・ポリフェノールいずれの摂取でも効果は見られなかった」と書いています。

小さなサブグループでの「効果なし」は、「何も起きない」という証明ではありません。女性のみの研究は6件と薄く、信頼区間はゼロを挟んで両側に伸びています。それでも今日の証拠はこうです。女性の場合、男性データが支えている効果を期待できる根拠は、現時点で公表されていません。

VO2max が上がっても、10 km が速くなるとは限りません

同じ研究グループが同じ年に出した2本が、この区別を避けられなくしています。どちらも市民ランナーに 8.4 mmol/日 を3日間、最後の1回は試験の2時間前という同じ方法です。

生理指標を測ったほう(13人)は改善しました。VO2max 46.6 ± 6.4 対 45.1 ± 5.8 mL/kg/分(P=0.022)、VO2max 到達速度 14.5 ± 0.8 対 13.9 ± 1.0 km/h(P=0.024)、最高速度 15.5 ± 1.1 対 15.2 ± 1.2 km/h(P=0.038)。

同じ方法を 10 km のタイムトライアルに持ち込んだほう(14人)はこうです。50.1 ± 5.3 分(ビーツ)対 51.0 ± 5.1 分(プラセボ)、P=0.391 で有意差なし。前半5 km は有意に速く(P=0.027)、14人中10人がタイムを縮めましたが、集団としてのゴールタイムは分かれませんでした。検査値が良くなったことと、レースが速くなったことは、別々の主張として扱ってください。この2本ではそうでした。

日本ではどこで買えるか

日本語の検索で「ビーツジュース」と一緒に出てくるのは「コンビニ」「市販」「カルディ」「スーパー」「業務スーパー」「どこで売ってる」。つまり最初に知りたいのは効果より入手経路です。ところが、これを一つのページで系統的に答えているところが見当たりません。

実店舗側で確認できているのは、形態の話までです。成城石井はニュージーランド産ビーツ(加熱処理・真空パック)を扱っています。カルディには缶詰・瓶詰めの形があります。イオンやイトーヨーカドーは店舗によります。ただし、どの店に今日在庫があるかまでは確認していません。取扱いは店舗により異なります、というのが正直な限界です。

通販側には、もっとはっきりした事実があります。研究で使われている水準のショットのブランド(BEET IT)には、日本に正規の輸入元(THALGO JAPON)があります。70 mL のショットは個人輸入ではなく、普通の通販で買えます。しかも日本の1本あたりの小売価格は、英国の価格と米国の価格の間に収まります。「海外の補助食品は日本で買うと高くつく」という前提は、少なくともこの製品には当てはまりません(為替で動くので、具体的な金額はここには書きません)。

生のビーツや水煮を使う手もあります。含有量から逆算すると、6〜8 mmol に相当するのは生重量で93〜198 g、中くらいのビーツで1〜2個です。

形態の選び方は、実測データが答えを出しています。研究の量に届くまでに必要な数は、運動用ショットが多くの場合1本、そのまま飲む混合飲料が1〜8本、粉末が2.3〜18.6回分。手っ取り早く済ませたいなら運動用ショット、というのがそのまま結論になります。

ラベルの読み方:同じ「ビーツジュース」でも中身は約50倍違う

この分野には構造的な問題があります。買う側が製品どうしを横に並べて比べられる共通の単位が、今のところ存在しません。これは告発ではなく、事実の記述です。しかも原因は棚の左右で違います。ビーツ側の原因は原料の変動(硝酸塩の量は土壌の窒素・栽培・保存で動きます)で、酸っぱいさくらんぼの側では測定方法そのものが標準化されていないという別の問題が重なります。

規模感は実測で分かります。2019年の研究が24製品・45ロットを買い集め、高速液体クロマトグラフィーで測定しました。同じ製品でもロット間のばらつきは変動係数で平均 30% ± 26%(範囲2〜83%)。製品間では硝酸塩量に約50倍の開きがあり、1回分で 5 mmol 以上を安定して満たした製品は24中5つだけでした。どの5つかは論文に書かれていません(この 5 mmol は、この検査論文が「ほとんどの人で効果を出すのに最低限必要」として置いた線で、上の 6 mmol とほぼ同じ量級です)。

ポイント:この検査は2019年のものです。その後、公開された同種の再検査は見当たらないため、業界が改善したかどうかは判断できません。個別ブランドの「今のロット」を推し量る材料にもなりません。

2025年に別の検査機関が行った調査も、形は同じでした。1回分あたり最大 495.7 mg から最小 4.3 mg まで、100倍以上の差。ジュース類は 8 fl oz(約237 mL)で 200〜300 mg 程度、濃縮ショットの1本は 500 mg 近く。同じ調査は、臨床試験で使われてきた量がおおむね1日 300〜600 mg だとも書いていて、これは372 mg という下限を挟む幅です。

ミリグラムが横に比べられないなら、比べられるものに置き換えます。研究で使われた量に届くまで、その形態を何回分飲む必要があるか、です。

硝酸塩 372〜496 mg(6〜8 mmol)に届くまでの回数
形態1回分必要な回数根拠
運動用ビーツショット70 mL1本表示 400 mg(6.45 mmol)、独立測定 6.41 ± 0.60 mmol
そのまま飲む混合飲料250〜355 mL1〜8本実測 1.02〜6.67 mmol/本。355 mL で 6.67 mmol という製品もありました
市販のジュース(実測で最も濃かったもの)体積で160〜213 mL500 mL あたり 18.77 ± 1.59 mmol
市販のジュース(実測で最も薄かったもの)体積で896〜1,194 mL500 mL あたり 3.35 mmol
ビーツ粉末4〜11 g(1回分)2.3〜18.6回分検査された6製品はいずれも硝酸塩量を非公表。実測 0.43〜2.56 mmol/回
硝酸塩入りジェル1個3.7〜5.0個表示 100 mg。レース中の追加用で、主剤ではありません
生のビーツ生重量93〜198 gある総説の「100 g あたり 250〜400 mg」という幅

注意が2つ。実測値は2017年9月から2018年6月に1つの研究室が買った検体のもので、今日買った1本の話ではありません。そしてロット間の変動係数が最大83%に達したデータセットである以上、ここのどの数字も保証ではありません。

市販ジュースの幅を見てください。同じ量を摂るのに、一方は 160 mL、もう一方は 1.2 L 近く。7.5倍の差です。「ビーツジュースを飲む」という行為そのものは介入ではありません。どの製品かが介入です。

数字が合う製品と、確かめようがない製品

これは「ブランドは信用できない」という話ではありません。2019年のデータの中には、表示どおりの製品があります。70 mL のショットで表示は 400 mg、独立測定は 6.41 ± 0.60 mmol(約 397 mg)。表示と実測が一致していて、そのまま1本で研究の量に届きます。そのまま飲む混合飲料にも、355 mL で 6.67 mmol と、ほぼ1本で足りるものがありました。

反対側は、詐称ではありません。だからこそ厄介です。粉末側では、検査された6製品のいずれも硝酸塩量をラベルに書いておらず、いずれも1回分で 5 mmol に届いていませんでした(実測 0.43〜2.56 mmol、最も薄いものは研究の量に届くのに14〜18.6回分)。書いていない以上、間違った数字というものが存在しません。問題は公表されていないため、自分がどれだけ摂取したかを検証できないことです。

この記事の前提そのものにも、注意を1つ。硝酸塩は、今のところ製品どうしを数字で比べられる唯一の成分です。ただし、ビーツジュースの効果が硝酸塩だけによるものかは決着していません。ほかの植物成分も関わっているのではないかという仮説はありますが、比較研究の限界が大きく、確かな結論は出せない、というのが現状です。

買う前の4項目

  • 1回分のミリグラムかミリモルが書いてあるか。欧州市場の18製品を調べた2026年の分析では、27.8%が用量をまったく書いておらず、科学文献で確立された方法に一致していたのは38.9%でした。
  • その数字を 372 mg と比べる。同じ分析で61.1%は1回分 300〜500 mg を含んでいたので、条件を満たす製品は普通に存在します。
  • 代替の単位はマーケティングとして扱う。「新鮮なビーツの40倍」のような表現は用量に換算できません。ビーツ1個の硝酸塩量に基準がないからです。
  • 推薦の重みを割り引く。同じ分析では55.6%が有名人やインフルエンサーを使っており、外部機関の裏づけがあるものは0%、科学研究に言及していたのは16.7%でした。

30秒で全部を無駄にする方法

硝酸塩はそれ自体では働きません。舌の奥にいる細菌が硝酸塩を亜硝酸に変えます。この工程を体は自前で効率よくできません。細菌を消せば、鎖はそこで切れます。

7日間の研究では、殺菌成分(クロルヘキシジン)入りのマウスウォッシュによって、口の中の亜硝酸生成が90%減り(p<0.001)、血漿の亜硝酸が25%減り(p=0.001)、収縮期・拡張期の血圧が 2〜3.5 mmHg 上がりました。効果は口腔細菌を壊した1日以内に現れています。

言えることの範囲は正確に。この研究が測ったのは血圧と亜硝酸であって、走りのタイムではありません。マウスウォッシュがレースタイムをどれだけ落とすかを調べた研究はありません。言えるのは、ビーツジュースが頼っている変換経路を切ってしまう、ということです。やることは単純で、ローディング中とレース当日の朝は殺菌系のマウスウォッシュを使わない、それだけです。

では、口の中の細菌に頼って大丈夫なのか

ここで逆向きの心配が出てきます。硝酸塩を還元する細菌に頼るのは、口の中にとって良くないのではないか、と。今のところ見つかっている証拠は、その心配とは逆の方向を向いています。健康な人の唾液から作ったバイオフィルムに硝酸塩を加えると、口腔の健康と関連する属(Neisseria が3.1倍、Rothia が2.9倍)が増え、むし歯・口臭・歯周病と関連する属が減り、乳酸の産生が下がって pH が上がりました。人でも同じ方向の変化が確認されています(18人、1日 12 mmol を10日間)。

ただし限定は厳しめです。中心的な証拠は試験管内のバイオフィルムで、人の研究は最長10日、しかも測っているのは菌の構成比であって、むし歯や歯周病の発症率ではありません。長期の口腔の臨床結果は、データがゼロです。だから「ビーツジュースでむし歯を防げる」とは言えません。言えるのは、心配の方向と現時点の証拠の方向が食い違っている、というところまでです。なお、亜硝酸化合物についての懸念が向けられているのは胃の中で起こる反応であって、口の中ではありません。

「硝酸塩=発色剤」という不安に、正面から答えます

日本語で硝酸塩・亜硝酸塩を調べると、運動の話より先にハムやソーセージの発色剤の話が出てきます。実際、日本語のQ&Aサイトには「ビーツは身体にいいと言われますが食べ過ぎると胃がんになるとも書いてあります」という質問が立っています(Yahoo!知恵袋 q10297940625)。この順番は日本特有で、英語圏の運動栄養の文脈とは逆です。

そしてこれは偶然ではありません。硝酸塩に一日摂取許容量(ADI)という上限が設けられたのは、まさにその「食品添加物・汚染物質としての硝酸塩」という文脈だからです。読者の不安の出どころと、規制の数字の出どころが同じ場所にある。だから答えは、事実・文脈・未解決の3つに分けないと正確になりません。

1. 事実:研究の量は ADI を超えています

硝酸塩の ADI は体重1 kg あたり1日 3.7 mg(硝酸イオン換算)です。体重をかけると次のようになります。

体重別の硝酸塩 ADI(1日 3.7 mg/kg、硝酸イオン換算)
体重1日の ADI
50 kg185 mg
60 kg222 mg
70 kg259 mg
80 kg296 mg
90 kg333 mg

この記事のプロトコルの量(1日 372〜496 mg)は、70 kg の成人の ADI(259 mg)の1.4〜1.9倍にあたります。逆から言うと、6 mmol(372 mg)が ADI とちょうど同じになるのは体重が約 100 kg のとき、8 mmol(496 mg)なら約 134 kg のときです。つまり大半のランナーにとって、学術的に有効とされている量は、ぎりぎりではなく明確に ADI の上にあります。しかもこの 1.4〜1.9倍 は、プロトコルの帯域で計算した数字です。この記事で引用している市民ランナーの2試験が実際に使ったのは 8.4 mmol、つまり約 521 mg で、70 kg の成人なら ADI の約2.0倍にあたります。帯域の下限だけを見ると、実際に行われた試験より軽く見えます。日常の食事と比べると、研究の量はおよそ3〜8倍です(分母はオーストラリアスポーツ研究所(AIS)が示す成人の平均摂取推定、1日 60〜120 mg)。

ポイント:ADI も研究の量も、どちらも硝酸イオンとして計算した数字なので、そのまま割り算できます。資料によっては「1 kg あたり 5 mg」と書かれていますが、これは別の限度ではなく、同じ限度を硝酸ナトリウムとして表したものです(硝酸ナトリウムと硝酸イオンの分子量の比が約1.37)。基準をそろえずに混ぜると、数字が約37%ずれます。

2. 文脈:その ADI が何のための数字か

ただしこの ADI は「食品添加物・汚染物質としての硝酸塩」に対して設けられたもので、野菜由来の硝酸塩や運動での使用を想定して作られた数字ではありません。出発点は動物実験で得られた無作用量(1 kg あたり1日 370 mg、硝酸イオン換算)で、そこに100倍の安全係数をかけています。

そして、この ADI を設定した委員会(JECFA)は、自分たちが何を評価していないかを明記しています。「Data on the putative health benefits of nitrate were not assessed, as this is not a safety issue and is therefore not within the purview」——硝酸塩の利益は安全性の問題ではなく委員会の職権範囲外なので、評価していない。つまりこの数字は、設計上そもそも片側だけを見たものです。

ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)は2017年の再評価で、数字そのものにも留保を付けました。唾液の中で硝酸塩が亜硝酸塩に変わる割合のばらつきが大きいため「it was not possible to derive a single value of the ADI from the available data」——現在のデータから単一の ADI 値を導くことはできない、としながら、同時に「currently there was insufficient evidence to withdraw this ADI」——撤回するだけの根拠もない、と結んでいます。支持もしていないし、否定もしていません。

同じ EFSA が、もう一つ大事なことを書いています。添加物・天然由来・汚染のすべての摂取源を合わせると、平均的な摂取でも、すべての年齢層で ADI を超える、と。ADI を超えているのはビーツジュースを飲む人だけの特殊な状態ではなく、野菜を食べている人が普通に置かれている状態だ、ということです。

ただし、この2つの公的な数字は互いに食い違っています。上で分母に使った AIS の推定(日常の摂取が1日 60〜120 mg)は、70 kg の成人の ADI である 259 mg より低い水準です。一方で EFSA は、平均的な摂取でも ADI を超えると書いています。どちらも公的な一次資料で、どちらが正しいかを判定する材料をこちらは持っていません。だから両方をそのまま並べます。この2つを、互いに裏づけ合う数字として読まないでください。

3. 未解決:まだ答えが出ていないこと

ここまでで「安全」とも「危険」とも結論できないことが見えると思います。一次資料が言っているのも、まさにそこです。

  • 公的なスポーツ機関(AIS)の原文は「chronic use of nitrate supplements has not been well studied」——硝酸塩サプリメントの長期使用は、まだ十分に研究されていない。
  • ビーツジュースの利益とリスクを扱った系統的レビューの結論は、負の側面についてのデータと文献が少なすぎて、バランスの取れたリスク評価を行うにはまだ足りない、というものです。

正しい結論は「安全です」でも「危険です」でもありません。短期的な効果の証拠のほうが、長期的な安全性の証拠よりずっと強い、です。だからこの記事が示している使い方は「レース前の数日間」に限られていて、それは研究が確かめた範囲がそこまでだからです。毎日続けたい場合や、持病・服薬がある場合は、この記事ではなく医師に相談してください。

起こりうること、そして相談すべき相手

ここからは、実際に飲んだときに起こることと、この記事では判断できない範囲の話です。数字が見つからなかったところは、見つからなかったと書きます。

尿と便が赤くなることがあります

ビーツを食べたあと、尿や便がピンクから赤に変わることがあります。AIS は、ビーツやそのジュースを飲むと尿と便が一時的にピンク色になることがあるとしたうえで、「This is a harmless side-effect」——これは無害な副作用である、と明記しています。

起こるのは一部の人です。100人を対象にした測定では、肉眼で分かる赤い尿が出たのは4人でした。文献にはもっと高い比率も載っていますが、それは前の文献の孫引きで、実測値ではありません。鉄不足や吸収不良のある人では多いとされています。

その測定の分布は偏ってはいましたが、はっきりした二峰性はありませんでした。つまり「この体質があるかないか」というオンとオフの話ではないので、1回出た・出なかったで自分を分類する必要はありません。

仕組みも安心材料になります。色素が残るかどうかは、肝臓や腎臓の処理能力ではなく、胃酸の強さと胃が空になる速さでほぼ決まります。原著論文も、この現象は肝臓での代謝や腎臓からの排泄が不足して起こるものではない、と明記しています。体のどこかが弱っているから赤くなる、という話ではありません。

ただし境界線は引いておきます。赤い尿はビーツ以外の原因でも起こり、血尿はその代表です。臨床の参考書でも、ビーツによる赤い尿は「赤い尿の鑑別項目」として載っています。ビーツを食べていないのに出た場合、あるいは食べるのをやめても続く場合は、医師に判断してもらう範囲です。

胃腸の不快感と、本番前に試しておく理由

AIS はこう書いています。ビーツジュースは、とくに濃縮された形や多い量では、軽い胃腸の不快感を起こすことがある。だから試合前に硝酸塩を使うつもりの選手は、まず練習で試しておくよう勧める、と。この「本番前に練習で試す」は、この記事の提案ではなく公的機関の助言です。

どのくらいの割合で起きるのかは、検索しても見つかりませんでした。公的文書も「sometimes」としか書いていません。数字のある研究が1つだけありますが、限定が肝心です。半プロのサッカー選手16人の交差試験で胃腸不快感のスコアが有意に高かったのは、ビーツジュースとカフェインを一緒に摂った条件とプラセボの比較であって(2.4 ± 3.6 a.u.、p<0.05)、ビーツジュース単独ではありません。レース前にカフェインも使う人にとっては、この組み合わせこそ練習で試しておく価値があります。

シュウ酸と結石については、答えを持っていません

日本語で「ビーツ 副作用」を調べると、シュウ酸と腎結石の話が出てきます。実際に気にされている論点なので、正直に書きます。ビーツの摂取と結石リスクを直接調べた研究は、見つかりませんでした。

ここで気をつけたいのは、「研究が見つからない」を「だから安全」と読み替えないことです。まだ調べられていない、というだけで、安全な側にも危険な側にも証拠がない状態です。

つまり「安全です」とも「リスクがあります」とも書けません。結石の既往がある場合は、この記事ではなく医師に相談してください。

医師に相談する範囲

  • 血圧が低め、または降圧薬を飲んでいる。ビーツジュース自体の降圧作用は確認されています(血圧が正常な男性18人で、100 g / 250 g / 500 g とほぼ量に応じた形で、24時間にわたり収縮期血圧 P<0.01、拡張期血圧 P<0.001 の低下)。ただし降圧薬と併用したときの試験は見つかりませんでした。効果が重なる可能性があるというのは仕組みからの推論であって、確かめられた事実ではありません。
  • 硝酸エステル系の薬(ニトログリセリンなど)や ED 治療薬(PDE-5 阻害薬)を使っている。医薬品の添付文書が禁忌としているのは「organic nitrates / organic nitrites」、つまり有機硝酸エステル・亜硝酸エステルという薬のグループです。野菜由来の硝酸塩は無機の硝酸イオンで、薬理学的には別の分類にあたり、添付文書に名指しはされていません。そして両者を併用した研究も見つかりませんでした。「危険だという証拠がある」のではなく「安全だという証拠がない」状態なので、該当する薬を使っている人は医師に確認してください。
  • 慢性腎臓病がある、透析を受けている。見つかった唯一の一次データは、血液透析を受けている8人と健康な7人に 70 mL・硝酸塩 400 mg を1回だけ飲んでもらった研究です。血漿硝酸塩の曲線下面積と最高濃度は透析患者のほうが有意に高く、一方で血圧と血清カリウムは変化せず、有害事象の報告もありませんでした。ただし単回投与・8人・44時間の観察なので、長く飲んでも大丈夫という話にはなりません。

形態についての警告も1つあります。AIS は、硝酸塩の塩の粉末(食品としてのビーツ粉末とは別物です)をサプリとして使うと用量を読み違えるリスクが大きく、亜硝酸塩(nitrite)の塩を誤って使えばメトヘモグロビン血症という中毒を起こしうる、と明記しています。食品の形(ジュース・濃縮液・野菜そのもの)で摂るのが、この点では一番単純な答えです。

マラソン後のあの試験では、効きませんでした

マラソンを走った34人が、レース後の3日間、ビーツジュースか同じカロリーのプラセボを飲みました。反動ジャンプも最大随意収縮もレース後に落ちましたが、群間差はありません(P>0.05)。筋肉痛は差なし(P=0.694)、インターロイキン-6 は交互作用なし(P=0.213)、白血球・クレアチンキナーゼ・AST・hs-CRP もすべて群間差なしでした。結論文は素っ気ないものです。マラソンのあと、ビーツジュースは炎症を弱めることも、筋損傷を減らすこともなかった、と。

ただし「ビーツと回復は無関係」とまでは言えません。別の総説は、ビーツジュースに回復面での上乗せがある可能性を仮説として挙げています(結論は出ていません)。確実に言えるのは、マラソン後の3日間という具体的な場面では差が出なかった、ということです。

回復側の証拠は別の物質にあり、そこには面白い反転が隠れています。ポリフェノールの経路は、硝酸塩が効かなくなるまさにその「よく鍛えた選手」で効いているように見えるのです。その比較はタルトチェリージュースのガイドにまとめました。

レース週の手順

  1. まず自分が対象かを確かめる。VO2max が 65 mL/kg/分 前後かそれ以上なら、統合データは d = 0.021、P = 0.745 です。期待しないでください。女性の場合、2つの独立した解析で効果が確認されていません。
  2. 製品より先に量を決める。1日あたり最低 6 mmol(372 mg)。自分が買う製品でそれが何回分になるかを、上の表かラベルの数字で出します。
  3. 3日以上続ける。アンブレラレビューが示した境界がここです。
  4. 最後の1回はスタートの2〜3時間前。摂取から1時間の時点では、血漿の亜硝酸はまだピークに達していません。
  5. 期間中は殺菌系マウスウォッシュをやめる。この一覧で一番安上がりで、一番見落とされます。
  6. 本番前に、ポイント練習で1度試す。AIS は、レース前に硝酸塩を使うつもりならまず練習で試すよう明記しています。反応の個人差も大きく、IOC のコンセンサスは、遺伝、腸内細菌叢、普段の食事といった要因によって個人差が大きいとしています。レース当日の補給全体はマラソン補給食ガイドで組み立ててください。
  7. 回復目的を当てにしない。マラソン後を狙って調べた試験では、差が出ていません。

参考文献

  1. Poon, E.T., Iu, J.C., Sum, W.M., et al. (2025). Dietary Nitrate Supplementation and Exercise Performance: An Umbrella Review of 20 Published Systematic Reviews with Meta-analyses. Sports Medicine.
  2. Senefeld, J.W., Wiggins, C.C., Regimbal, R.J., et al. (2020). Ergogenic Effect of Nitrate Supplementation: A Systematic Review and Meta-analysis. Medicine & Science in Sports & Exercise.
  3. Gallardo, E.J., Coggan, A.R. (2019). What's in Your Beet Juice? Nitrate and Nitrite Content of Beet Juice Products Marketed to Athletes. International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism.
  4. Arnold, J.T., Oliver, S.J., Lewis-Jones, T.M., et al. (2015). Beetroot juice does not enhance altitude running performance in well-trained athletes. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism.
  5. Kapil, V., Haydar, S.M.A., Pearl, V., et al. (2013). Physiological role for nitrate-reducing oral bacteria in blood pressure control. Free Radical Biology and Medicine.

よくある質問

ビーツジュースはマラソン前にどれくらい飲めばいいですか?

目安は硝酸塩で1日 6 mmol(372 mg)以上を、3日以上続けて、最後の1回をスタートの2〜3時間前です。製品でいうと、400 mg と表示された 70 mL の運動用ショットなら1本。生のビーツなら93〜198 g(中サイズ1〜2個)。市販ジュースは製品差が大きく、実測で最も濃いものなら約 160 mL、最も薄いものは 1.2 L 近く必要でした。飲んだ量(mL)ではなく、ミリグラムが用量です。

ビーツジュースを飲むのは、レースの何時間前がいいですか?

スタートの2〜3時間前です。原著研究のプロトコルは運動の2時間前と2.5時間前で、第三者の検査でも血漿の亜硝酸がピークになるのは摂取の2〜3時間後と報告されています。摂取から1時間の時点では、まだピークに達していません。多くのレースでは、朝食と同時かその直後に飲む形になります。

女性ランナーにも効果はありますか?

公表されている証拠は、効果を期待できる根拠になっていません。このページで引用したビーツの原著試験はすべて男性のみで、2つの独立したメタ解析が女性を対象に効果を探して見つけていません(80研究の解析では「女性のみを対象にした研究では確認されなかった」、P = 0.347。118研究の解析では「女性では硝酸塩・ポリフェノールいずれの摂取でも効果は見られなかった」)。女性のみの研究は6件と薄いので、これは「効果がないことの証明」ではなく「根拠がまだない」状態です。ただし標準的な用量の指針は、女性で検証されていません。

粉末(パウダー)とジュース、どちらを選べばいいですか?

研究の量に届きやすいのは運動用ショットです。実測データでは、研究の量(6〜8 mmol)に届くのに運動用ショットは多くの場合1本、そのまま飲む混合飲料は1〜8本、粉末は2.3〜18.6回分必要でした。粉末が不利なのは、検査された6製品のいずれも硝酸塩量をラベルに書いておらず、いずれも1回分で 5 mmol に届いていなかったためです。ラベルにミリグラム表示がある製品を選ぶ、というのがそのまま選び方になります。

生のビーツやほうれん草で代用できますか?

できます。ある総説によると生のビーツは生重量 100 g あたり 250〜400 mg の硝酸塩を含むので、93〜198 g(中サイズ1〜2個)で用量に届きます。しかもビーツである必要すらありません。同じ総説はほうれん草を 250〜500 mg、ルッコラを 300〜600 mg とし、よく食べられている野菜には同等かそれ以上の硝酸塩が含まれている、と書いています。ビーツが研究で使われるのは、含有量が一番だからではなくジュースにしやすいからです。ただしこの幅は生・生重量のみに当てはまり、加熱や粉末には使えません。

ビーツジュースに副作用はありますか?硝酸塩を摂って大丈夫ですか?

まず副作用から。尿や便が一時的にピンクから赤に変わることがありますが、AIS は原文で「This is a harmless side-effect」と書いています。起こるのは一部の人で、100人を対象にした測定では肉眼で分かる赤い尿が出たのは4人でした。ただし赤い尿は血尿など別の原因でも起こるので、ビーツを食べていないのに出た場合や、やめても続く場合は医師に判断してもらってください。もう一つは軽い胃腸の不快感で、AIS は濃縮形態や多い量で起こることがあるとし、レース前に使うならまず練習で試すよう助言しています

硝酸塩そのものの安全性は、「安全」とも「危険」とも言い切れない、が正確な答えです。事実として、この記事の量(1日 372〜496 mg)は 70 kg の成人の ADI(1日 259 mg)の1.4〜1.9倍にあたります(本文で引用した試験が実際に使ったのは 8.4 mmol = 約 521 mg で、その場合は約2.0倍)。ただしこの ADI は食品添加物・汚染物質としての硝酸塩に設けられた数字で、設定した委員会(JECFA)は健康上の利益は職権範囲外なので評価していないと明記しています。しかも EFSA は、すべての摂取源を合わせれば平均的な摂取でも全年齢層で ADI を超えると書いています。超えているのはビーツジュースを飲む人だけではない、ということです。未解決の部分もはっきりしていて、AIS の原文は「長期使用はまだ十分に研究されていない」、専門の系統的レビューの結論は「負の側面のデータが少なすぎてバランスの取れたリスク評価ができない」。だから正しい言い方は「短期の効果の証拠のほうが、長期の安全性の証拠よりずっと強い」になります。持病や服薬がある場合は医師に相談してください。

「ビーツ ランニング」で検索してもイヤホンばかり出てくるのはなぜですか?

日本語の「ビーツ」が、ヘッドホンの Beats とまったく同じカタカナだからです。実際に測ると「ビーツ ランニング」の検索候補は丸ごとイヤホン関連で埋まっていて、野菜の情報にはたどり着けません。言い換えれば解決します。運動の文脈で候補が汚染されていない、ほぼ唯一の入り口が「ビーツ マラソン」です。野菜そのものを調べるなら「ビートルート」、製品を探すなら「ビーツジュース」「ビーツ パウダー」を使ってください。なお日本では、ビーツは「ボルシチに入っている赤い野菜」として知られていて、運動サプリメントという文脈自体が薄いため、日本語の検索結果は食材やレシピの側に寄ります。単語を替えるだけで、出てくる世界が入れ替わります。

ビーツジュースはスーパーやカルディ、コンビニで買えますか?

形態としては流通しています。成城石井はニュージーランド産ビーツ(加熱処理・真空パック)を扱い、カルディには缶詰・瓶詰めの形があります。イオンやイトーヨーカドーは店舗によります。ただし、どの店に今日在庫があるかは確認できていないため、取扱いは店舗により異なる、というのが正直なところです。確実なのは通販側で、研究で使われている水準のショットのブランド(BEET IT)には日本に正規の輸入元があり、個人輸入ではなく普通の通販で買えます。日本での1本あたりの小売価格も、英国の価格と米国の価格の間に収まります。「海外の補助食品は日本だと高くつく」という前提は、少なくともこの製品には当てはまりません。