タルトチェリージュースの効果:回復・睡眠といつ飲むか
19試験の統合解析では筋肉痛もCKも変わりませんが、筋力の戻りは速くなります。マラソン後の8日間の飲み方、レース前90分の使い方、日本での入手先まで。
ポイント
- 筋肉痛には効かず、戻るのは「力」です — 19試験を統合すると、筋肉痛・クレアチンキナーゼ・IL-6・TNF-α・関節可動域のいずれにも有意な効果なし(2010年のマラソン試験も同じ結論)。一方で最大随意収縮の回復は全時点で改善しました(運動直後 0.63 から96時間 4.82)。ただし研究間のばらつきは大きく(69〜93%)、著者自身が証拠の確実性を very low〜moderate と評価しています。
- マラソン方式は8日間 — レース前5日+当日+その後48時間。報告されている量は、そのまま飲むジュース約 237 mL を1日2回。1日あたり約 200 kcal・糖 50 g がついてきます。
- レース前は評価が逆転します — 15 km の自転車タイムトライアルの90分前に飲むと、鍛えた選手では有意に速くなり(2.83%)、日常的に運動している人では差が出ませんでした。ビーツとちょうど逆です。
- アントシアニンのmg表示はどこにもありません — 確認した範囲では公式ページに1つも見当たらず、代わりに粒数が書かれています。表示された栄養素の数値がすべて一致する2製品が、「60粒以上」と「40粒」を名乗る例もあります。
- 痛風の「35%」は観察研究の関連です — 痛風患者282人の試験では尿酸の下がり方が通常のアルカリ化剤と有意差なし。発作を減らせるかを専門に検証する二重盲検試験はコロナ禍で中止され、今日まで結果が出ていません。
まず言葉の整理から。タルトチェリーは酸味の強いさくらんぼ(モンモランシー種など)で、洋菓子のチェリータルトとは別物です。日本語では語順がひっくり返りやすく、検索するとタルトの作り方が出てきます。山形の佐藤錦のような甘いさくらんぼとも品種が違い、研究に使われているのは酸っぱいほうです。
そのうえで、この飲み物は守れない約束で売られています。売り文句は「筋肉痛が軽くなる」。ところが鍛えたアスリートを対象にした19試験を統合すると、そうはなりません。統合の結果は、筋肉痛、クレアチンキナーゼ、IL-6、TNF-α、関節可動域のいずれについても、有意な効果は認められなかった、というものでした。
同じ解析が見つけたもののほうが、たぶん役に立ちます。力を出す能力が戻るのが速くなるのです。ラベルに書いてある商品とは別の商品で、だから飲むべきタイミングも変わってきます。
実際に起きること、起きないこと
2026年のメタ解析(Daab ら、Sports Medicine Open)は、鍛えたアスリートの19試験を PRISMA 2020 に沿って統合しました。最大随意収縮の回復は測定した全時点で改善しています。効果量は運動直後 0.63、24時間 1.12、48時間 1.29、72時間 2.14、96時間 4.82。反動ジャンプは48時間の1点のみ改善(1.41)。CRP は運動直後から48時間まで低下しました(-0.46、-0.73、-0.68)。
著者自身が付けた但し書きも一緒に読んでください。研究間のばらつきは大きく(異質性の指標で69〜93%)、証拠の確実性は著者自身の評価で「Certainty of evidence ranged from very low to moderate」——きわめて低いから中程度まで、とされています。結論文も、所見は不均一で、低から中程度の確実性の証拠に支えられているにすぎないので慎重な解釈を要する、と締めくくっています。感度分析では、いくつかの時点の有意性が個々の研究に左右されたとも書かれています。誤差の幅が広い本物の所見であって、確定した事実ではありません。
マラソン試験と、そこから出た8日間のやり方
ランナーにとっての基準になる試験は、市民マラソンランナー20人を対象にしたものです(Howatson ら、2010年)。摂取期間はレース前5日間、レース当日、そしてレース後48時間。合計8日間でした。
等尺性筋力の回復はタルトチェリー群で有意に速くなっています(P=0.024)。要旨の次の一文は、あまり引用されません。「No other damage indices were significantly different」。この論文は筋肉痛を damage indices の一つとして測っているので、この一文は筋肉痛とクレアチンキナーゼを含みます。後の19試験の統合解析も、独立に同じ結論に達しました。
炎症の指標は動いています。CRP(P<0.01)と尿酸(P<0.05)。総抗酸化能は補給後の全測定点で約10%高く(P<0.05)、脂質過酸化は48時間の時点で低くなっていました。インターロイキン-6 もこの単一試験では有意でしたが(P<0.001)、後の統合解析では有意な効果が見つかっていません。再現されなかった単一試験の結果として扱ってください。
量については、どこまでが記録されているのかに注意が必要です。8日間という期間は要旨の原文どおりです。1日あたりの量はそうではありません。全文が公開されておらず、報告されている方法(約 8 fl oz = 約237 mL の、そのまま飲むボトル入りジュースを1日2回、1日に約120粒相当)は二次情報からの抽出です。ただし1点だけ確かなのは、薄めて飲む濃縮タイプではなかったということ。ここを取り違えると量が一桁ずれます。
レース前は、話が逆になります
よくある整理はこうです。ビーツは前、さくらんぼは後。2つの独立した情報源が、この整理は違うと言っています。しかも直感と逆の方向にです。
クロスオーバー試験が、モンモランシー濃縮液を 15 km のタイムトライアルの30分前・90分前・150分前に飲ませました。参加者20人の内訳は、日常的に運動している人10人と、鍛えた選手10人。90分前がいちばん良く、1603.1 ± 248 秒から 1554.8 ± 226.7 秒へ、2.83%の改善でした。ただし有意に速くなったのは鍛えた群だけ(1496.6 ± 173.1 秒 から 1466.8 ± 157.6 秒)で、日常的に運動している群では有意差が出ていません。著者の言葉では、運動能力向上の効果は鍛えた参加者のほうが大きかった、となります。
行動に移す前に、限界を2つ。これは自転車の 15 km タイムトライアルであって、ランではありません。同種の持久系種目の証拠として扱ってください。そして1試験、各群10人です。
仕組みを知っておくと、なぜ逆になるのかが分かります。血漿のフェノール代謝物(フェルラ酸・バニリン酸)は摂取から約90分でピークになり、血漿の硝酸・亜硝酸は変化しませんでした。つまりこれはポリフェノールの経路であって、ビーツの硝酸塩の経路ではありません。まったく別のレバーです。
118件の研究を統合した解析も同じ方向を指します。硝酸塩の多い食品にもポリフェノールの多い食品にも、わずかながら有意な効果が示され(SMD はそれぞれ 0.15 と 0.17、p<0.001)、ポリフェノール側で効果が見られた食品の中にモンモランシーチェリーが名指しされています。核心はこの一文です。「Well-trained males (VO2max 65 ml.kg.min-1 or above) exhibited small, significant benefits following polyphenol, but not nitrate consumption」——よく鍛えた男性は、ポリフェノールでは小さいながら有意な効果を示したが、硝酸塩では示さなかった。結論も、高度に鍛えた持久系アスリートは硝酸塩の多い食品からは恩恵を受けないように見えるが、ポリフェノールからは受けるかもしれない、というものです。
| 対象 | 硝酸塩(ビーツ) | ポリフェノール(タルトチェリー、運動前) |
|---|---|---|
| 市民ランナー | 効果あり、ただし小さい(d = 0.174) | 有意な改善は測定されず |
| よく鍛えた人(VO2max 65 mL/kg/分以上) | 効果が確認されず(d = 0.021、P = 0.745) | 小さいが有意な効果あり |
| 女性(両方とも) | 統合した女性データでは効果が確認されず(硝酸塩は P = 0.347。118研究の解析でも、女性では硝酸塩・ポリフェノールいずれの摂取でも効果は見られませんでした) | |
行のラベルをよく見てください。売られ方とは逆です。鍛えるほどビーツは効かなくなり、タルトチェリーは効く可能性が上がります。どちらも効果は小さく、解析の著者自身が「trivial」「objectively small」という言葉を使っています。ビーツ側の全体像(届くべき量の話を含めて)はビーツジュースのガイドにあります。
表の女性の行について、範囲を1つ補足します。これはパフォーマンスの解析から出た結果です。回復のメタ解析は鍛えたアスリートを対象にしていますが性別ごとの内訳を報告していないため、女性とレース後の筋力回復については、どちらの方向にも何も言っていません。
ラベルの読み方:比べられる単位がありません
2つのタルトチェリー製品を用量で比べようとすると、本当の問題に突き当たります。この分野には、買う側が製品を横に並べて比べられる共通の単位が、現時点で存在しません。特定の会社への告発ではなく、カテゴリーについての事実です。
2026年8月に確認した範囲では、各ブランドの公式の商品ページ・成分ページ・公式の摂取量記事のいずれにも、アントシアニンのミリグラム表示はありませんでした。代わりに置かれているのが「代替の単位」です。
- 粒数:同一ブランドの2製品で「60 TART CHERRIES / 8 OZ」と「50 TART CHERRIES / 8 OZ」、別ブランドは 946 mL あたり「approximately 3,000 Montmorency cherries」、さらに別のブランドは 32 oz ボトルについて「delivers the antioxidant power of 1,000 tart cherries」——1,000粒に相当する抗酸化力、という書き方をします。
- 果実の重さ:「made from 3 lbs. of organic cherries」。
- 倍数:「five times the antioxidants of sweet cherries」。
共通する欠点は、分母が検証できないことです。「さくらんぼ1粒」のアントシアニン量に標準がないので、粒数は用量に換算できませんし、2つの粒数を比べることもできません。
それをいちばんきれいに示すのは、ブランド自身のデータです。あるブランドの 59 mL のリカバリーショットと 74 mL の濃縮パウチは、両方が表示している栄養素の数値がすべて一致します(100 kcal/炭水化物 23 g/糖 20 g/たんぱく質 1 g/ナトリウム 45 mg/カリウム 320 mg)。それでいて宣伝文句は「60粒以上」と「40粒」です。測れる成分が同じで、主張だけ50%違う。両方が正しいことはありえません。そのうえ、この「粒数」は各社が同じことを言っているわけですらありません。2社は「この瓶に何粒使ったか」という中身の話をしていますが、残る1社が言っているのは「抗酸化力が何粒ぶんに相当するか」という別の話です。これらの数字は、そもそも一列に並べる資格がありません。
いちばん分かりやすい1点
あるブランドの「1日どれくらい飲むべきか」という公式記事で、ページ全体を通して唯一のミリグラム表示は「3mg of added melatonin」でした。アントシアニンについては定性的な説明だけです。同じ会社は別の製品で「320 mg of magnesium glycinate」と書いています。
つまり、精密なミリグラム表示は、成分が「添加物」のときには問題なくできています。数字がないのは、回復の主張が乗っているほうの分子です。ここで言えるのは「虚偽表示だ」ではありません。そもそもミリグラム数を主張していないので、間違えようがないからです。正確な言い方はこうなります。公表されていないため、自分がどれだけ摂取したのかを検証できない。
原因は2つ重なっています。1つは原料そのものの変動が大きいこと。ある研究では、使われた新鮮な甘いさくらんぼのロットごとに、アントシアニン濃度が約20倍も違っていました(これは甘いさくらんぼのデータで、タルトチェリー製品の実測値ではありません。さくらんぼ類の原料がそもそも大きくばらつくことの傍証として読んでください)。品種間でも、総フェノールは 100 g あたり 74〜754 mg、アントシアニンは 21〜285 mg と開きます。もう1つは測定方法が標準化されていないことで、どの分析法を使ったかによって報告される数字が変わります。
これは外野の不満ではありません。29件の研究をまとめた総説の著者自身が、結論にこう書いています。生のさくらんぼの栄養組成を保った、安定して標準化された製品が切実に必要だ、としたうえでこう書いています。「It is important that all intervention studies report at least the daily total amounts of phenolics and anthocyanins served to study participants」——すべての介入研究は、参加者に提供したフェノール類とアントシアニンの1日あたり総量を、少なくとも報告すべきである。研究者も同じ数字を求めています。
「濃縮」には3種類あります
- 薄めて飲むシロップ型:1回分は 30 mL や 40 mL で、水などで薄めて飲みます。
- 名前は濃縮でも、そのまま飲むもの:2.5 fl oz(74 mL)のパウチは、同じブランドのボトル入りより少し濃いだけで、薄める工程はありません。
- そのまま飲むジュース:マラソン試験で使われたのはこれです。
1つ目と2つ目を取り違えると、どちらの方向でも用量が壊れます。パウチを薄めれば意図した量のごく一部になり、シロップを 237 mL 飲めば、どの研究のプロトコルよりはるかに多くなります。
研究の量と比べられるのは、硝酸塩の側だけです
29件の総説のうち運動を扱った研究が出していた量は、1日あたり 50〜270粒相当で、総説の著者自身がこれを高用量と評しています。では市販品はどうなのか。タルトチェリー側では、この比較がそもそも成立しません。粒数は各社で基準がそろっておらず、中身の量を言っているものと抗酸化力の等価を言っているものが混じっているからです。基準の違う数字どうしを割っても、研究の量と比べたことにはなりません。ついでに言えば、あるブランドは公式サイトに1回分の量すら書いておらず、小売店の表示では 30 mL と 40 mL の二通りが流通しています。1回分が何ミリリットルなのかさえ一つに定まらない、というのがこのカテゴリーの現状です。
比べられるのは硝酸塩の側だけです。実測された粉末6製品はいずれも1回分で有効量の目安とされる 5 mmol に届かず、いちばん薄いものは研究の量に達するのに14〜18.6回分が必要でした。どちらの会社も数字を間違えているわけではありません。多くが数字を公表していないだけです。
50〜270粒という幅を目標に使う前に、注意を2つ。29件のうち20件が酸っぱいさくらんぼ、7件が甘いさくらんぼ、2件は不明で、混ざったプールです。そして粒数は、上で述べた理由からミリグラムに換算できません。
確かめられる製品は、硝酸塩側にはあります
これは「ブランドは信用できない」という話ではなく、「何を見ればいいか」という話です。硝酸塩の側には、数字が合う製品があります。70 mL のショットで表示は 400 mg、独立測定は 6.41 ± 0.60 mmol(約 397 mg)。表示と実験室の測定値が一致しています。確かめられる製品とはこういうものです。タルトチェリー側には、今のところこれに相当するものがありません。照合すべき公表数字が存在しないからです。
一緒に買っている砂糖
栄養表示は価格よりずっと安定しているので、計画に入れるならここです。8日間のマラソン方式を、よくある「そのまま飲むタイプ」で行うと、1日あたり約 200 kcal・糖 50 g を8日間。同じブランドのオリジナル配合なら 240 kcal・58 g。研究の上限である1日270粒に届かせようとすると1日4.5本、約 450 kcal・糖 112.5 g になります。
これがコストかボーナスかは、どの時期に置くかで変わります。カーボローディングの週なら仕事をしてくれますが、ベース期なら目的のない砂糖です。自分の炭水化物の目標と突き合わせるならランナーの食事管理ガイドを見てください。
ただし「その糖が血糖を押し上げる」という次のステップには、実測の裏づけがありません。12件のランダム化比較試験を統合した解析は、体格の指標にも血糖の指標にも有意な影響はなかった、と報告しています(脂質は改善しうる、とも書いています)。過体重・肥満の成人26人が1日 240 mL を4週間飲んだ交差試験でも、空腹時血糖・空腹時インスリン・インスリン抵抗性のいずれにも介入前後で差は出ていません。
それでも数字は数字として渡しておきます。糖尿病のある人を対象にした試験は、1件も見つかりませんでした。血糖を管理している人にとって、1日 50 g の糖を8日間足すかどうかは、この記事ではなく主治医と決める話です。この記事にできるのは、その数字を正確に渡すところまでです。
価格については、構造的な結論だけが古びません。同じブランドの中でも、どのパックサイズを買うかだけで1レース週あたり約3倍変わります。そして大容量が必ず安いわけでもなく、多本入りボトルが1回あたりで単品パウチより約18%高いという例がありました。
日本での入手:どこまで確かか
日本語で一緒に検索されているのは「成城石井」「カルディ」「業務スーパー」「どこで売ってる」。実店舗を探している人が確実にいます。ただし、実際に今日どの店に在庫があるかは確認できていません。取扱いは店舗により異なります、というのが正直な限界です。
通販側は、マイナーではあっても品切れではありません。2026年8月時点で、大手通販の取扱いはヤフーショッピングが約300件、楽天が137件。同じ楽天では、ビーツのショットで知られる1ブランド(BEET IT)だけで1,526件あります。タルトチェリー全体の流通量が、ビーツの1ブランドの11分の1ほどという関係です。少ないですが、買えないわけではありません。
もう一つ、日本の読者に効く事実があります。国内ブランドの中に、ビーツとタルトチェリーの両方を出しているところがあります。2つを別々に個人輸入する必要はありません。
買う前に確認することは1つだけです。上の3タイプ(薄めるシロップ型/そのまま飲む濃縮/そのまま飲むジュース)のどれなのか。ここを間違えると、量が一桁ずれます。
効かない場面もあります
36人が参加した試験では、1日2回 250 mL を9日間続け、5日目に肘の屈筋で高負荷のエキセントリック運動を行いました。ダメージは確かに起きています。最大随意収縮は最大 26.8% 低下し、クレアチンキナーゼは最大 1385 U/L まで上がりました。それでも群間差はありません。結論は、酸味の強いさくらんぼもザクロも、肘の屈筋の高負荷エキセントリック運動からの回復を高めない、というものでした。
つまり、正直な境界線は宣伝より狭いということです。証拠があるのは代謝的な持久系のダメージ、つまりマラソンが作るタイプのダメージで、高負荷のエキセントリック負荷には広がりません。
毎日飲むべきではない理由
運動誘発性筋損傷への栄養介入を扱った総説が、ここに直接効く問いを立てています。多くの栄養介入は酸化ストレスと炎症を標的にしているが、その2つは運動誘発性筋損傷の原因であると同時に、回復と適応の過程にも欠かせない。だとすれば、それを狙ったサプリメントや機能性食品を長期に投与することが本当に最善の方法なのかは疑わしい——そういう問いです。著者は長期使用のホルミシス効果の可能性にも触れています。
この総説が言っていないことも2つあります。タルトチェリーを名指ししていません(カテゴリー全体を扱った総説なので、ここに当てはめるのは機構からの推論であって、所見ではありません)。そして「抗酸化物質がトレーニング適応を壊す」とも言っていません。長期の毎日使用が最善の方法かどうかを問うているだけです。
実践的な結論は無難なものになります。回復を急ぎたいレース週、試合が詰まった時期、高強度ブロックで使う。適応を作りたい時期に年中飲まない。今どちらの時期か曖昧なら、トレーニング負荷計算機とレース後リカバリープランナーで週を位置づけてください。
睡眠については、どこまで言えるか
日本語でタルトチェリーを調べると、運動よりも睡眠の話に先に当たります。ここが証拠と期待の差がいちばん開くところなので、範囲をはっきりさせておきます。
ランダム化プラセボ対照試験だけを集めた系統的レビューは、こう報告しています。「the consumption of milk and sour cherries, sources of melatonin, may improve sleep quality in humans」。言葉どおりに読んでください。このレビューは牛乳とサワーチェリーをまとめて扱っていて、対象はアスリートではなく一般の人たちです。
同じレビューは自分の限界も書いています。用量と期間の均質性を欠いていること。そして締めくくりは「さらなる研究が必要である」。つまりこの証拠で言えるのは「睡眠の質が改善する可能性がある」までです。「何分長く眠れる」という具体的な数字を挙げている情報は、この証拠の範囲を超えています。
朝と夜、どちらに飲むか
買ったあとでいちばんつまずくのがここですが、正直な答えはこうです。朝と夜を比べた試験は、この記事が根拠にしている研究の中にありません。だから「夜のほうが良い」と言い切れる根拠は、少なくともここにはありません。
試験で確かめられているタイミングは2つだけです。回復目的なら1日2回を数日間続ける方式(マラソン試験はレース前5日+当日+その後48時間)。レース前に1回使うなら90分前(試験された30分・90分・150分のうち最良で、血中のフェノール代謝物のピークとも一致します)。この2つ以外は、今のところ好みの問題です。
そして順序として、回復の大半は飲み物ではなく睡眠そのもので起きます。ランナーの睡眠ガイドのほうが効きますし、自分の睡眠と回復の状態は睡眠&リカバリースコア計算機で点検できます。
尿酸値と痛風:どこまで分かっているか
日本語で「タルトチェリー」を調べると、「尿酸値」が並んで出てきます。ここは病気の話に踏み込む場所なので、境界をはっきりさせておきます。まず、上のマラソン試験でも運動後の尿酸は下がっていますが、あれは激しい運動のあとに動く指標の1つであって、痛風について調べたものではありません。両者は別の話です。
いちばんよく引用される数字から。痛風のある633人を対象にした研究で、さくらんぼを2日以内に摂取した期間は、摂取しなかった期間と比べて発作リスクが35%低いことと関連していました(オッズ比 0.65、95% CI 0.50〜0.85)。ただしこれは case-crossover という観察研究で、発作も摂取も本人の自己申告です。原文の言葉も「associated with」——関連している、であって「減らせる」ではありません。
尿酸そのものを測った対照試験は1件あります。過体重・肥満の成人26人(痛風の患者ではありません)が1日 240 mL を4週間飲んだ交差試験で、血漿尿酸は 378.3 µM から 320.8 µM へ下がりました(P<0.05)。同じ期間、プラセボ側は 382.1 µM から 390.2 µM へ上がっています。
では実際の痛風患者ではどうか。282人の痛風の男性を12週間追った試験では、尿の pH の上昇も血清尿酸の低下も3群で同程度で、群間に有意差はありませんでした。つまり通常使われるアルカリ化剤と比べて、尿酸を下げる幅に差はなかったということです。この試験にも限定が4つあります。介入物は酸味の強いさくらんぼとクエン酸塩の混合製剤で純粋なジュースではないこと、参加者全員が並行して尿酸降下薬を飲んでいたこと、オープンラベルであること、対照が偽薬ではなく実薬だったことです。
ここを読み違えないでください。中止されたというのは、効かないと分かったという意味ではありません。効くと分かったという意味でもありません。この問いはまだ一度もきちんと検証されていない、というだけです。「検証されていない」をどちらかの答えとして読むのは、どちらも誤読です。
だから結論はこうなります。痛風には診断基準があり、一次選択の薬があり、血清尿酸を 6 mg/dL 未満にするという治療目標があります。さくらんぼはその治療手段ではありませんし、規範的な治療を置き換えたり、受診を先延ばしにする理由にはなりません。食事の補助として取り入れるかどうかは、主治医と相談して決める範囲です。
副作用と、薬との関係
ここは正直に書くしかありません。タルトチェリージュースの不良反応を専門に評価した研究は、見つかりませんでした。引用できる唯一の安全性の記述は、上の痛風患者282人の試験にある「Adverse events were similar across all three groups」——3群で有害事象は同程度だった、という一文です。ただしその試験の介入物は混合製剤で純粋なジュースではなく、しかもオープンラベルです。だから「副作用がない」とは書けません。書けるのは「群間差は報告されていないが、不良反応を専門に調べた研究がまだない」までです。
薬との相互作用については、検索して引用できる記録が見つかりませんでした。抗凝固薬などとの組み合わせを人で調べた研究がヒットしません。これは「相互作用がない」という意味ではありません。証拠がゼロであることは、有ることの否定にも、無いことの証明にもなりません。何か薬を飲んでいる人は、医師に確認してください。
もう1点、状態を区別しておきます。メラトニンを含むことから睡眠薬や鎮静薬との関係を気にする人がいますが、この組み合わせについては、そもそも専門の検索をしていません。検索してゼロだった上の項目とは状態が違います。分からないことは分からないと書きます。
使い方の手順
- 目的を先に決める。レース後の筋力回復がいちばん証拠が強く、19試験の統合解析があります。レース前の1回は証拠が薄く、自転車の1試験とメタ解析1本です。
- 回復目的なら8日間。レース前5日+当日+その後48時間。報告されている量は、そのまま飲むジュース約 237 mL を1日2回(この量は二次情報である点に注意)。
- レース前に使うなら90分前。試験された3つのタイミングのうち最良で、血中のフェノール代謝物のピークと一致します。
- 期待するのは「感覚」ではなく「力」。筋力の戻りは速くなりますが、統合データでは筋肉痛もクレアチンキナーゼも変わりません。
- 買う前にタイプを確認する。薄めるシロップ型・そのまま飲む濃縮・そのまま飲むジュースは、別の用量の別の商品です。
- 砂糖を計算に入れる。標準的な方式で1日あたり約 50 g を8日間。
- 年中飲まない。レース週と、試合が詰まった時期に取っておきます。
- 持病や服薬があるなら、そこは医師と。痛風、血糖の管理、服薬中——いずれもこの記事の証拠では判断できない範囲です。数字はこの記事が渡します。決めるのは主治医との相談です。
参考文献
- (2026). Effects of Tart Cherry Juice Supplementation on Recovery from Exercise-Induced Muscle Damage in Athletes: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Medicine - Open.
- (2024). Montmorency cherry supplementation enhances 15 km cycling time trial performance: Optimal timing 90-min pre-exercise. European Journal of Sport Science.
- (2021). Effect of food sources of nitrate, polyphenols, L-arginine and L-citrulline on endurance exercise performance: a systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials. Journal of the International Society of Sports Nutrition.
- (2010). Influence of tart cherry juice on indices of recovery following marathon running. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports.
- (2018). A Review of the Health Benefits of Cherries. Nutrients.