トレーニングレディネスは無視していい?公式スコア表と見方
「無視していい」の声が根強いトレーニングレディネス。公式の最上位「最適」は95〜100、ボディバッテリーは6要素に入りません。表示されない時の確認手順も。
ポイント
- 公式の「最適」は95〜100だけです — 海外の解説サイトで見かける「80〜100が最上位」は、その下の「高」(75〜94)と混ざった誤りです。
- ボディバッテリーは6つの要素に入っていません — レディネスは朝の起床時に最も大きく更新される総合判定で、直近10日間の負荷と3週間分のHRV基準まで見る、別系統の指標です。
- 「無視していい?」の答えは、要素の明細しだいです — 睡眠やリカバリータイムで説明がつく低スコアは従う価値あり。説明がつかず体感が良いなら、飛ばさずにずらします。
- 表示されないときは3つを順に確認します — データカード内への移動、パフォーマンスコンディションの設定、非対応機種。故障を疑うのはその後で十分です。
トレーニングレディネス(Training Readiness)は、その日どれだけ走れる状態かをスコアで示す機能です。ボディバッテリーが「いまの元気度」なら、こちらは朝の起床時に最も大きく更新される総合判定で、直近10日の負荷と3週間分のHRV基準まで見ています(スコア自体は一日を通して更新されます)。
公式のスコア表は色と数値で決まる
公式マニュアルの区分は5段階。日本語版の正式な呼び名は「最適・高・中程度・低・悪い」で、英語圏の解説で見かける Prime / High は同じ区分の英語版の呼び名です。
| 色 | スコア | 日本語版 | 英語版 |
|---|---|---|---|
| パープル | 95〜100 | 最適「最高の状態です」 | Prime |
| ブルー | 75〜94 | 高「難題に取り組む準備ができています」 | High |
| グリーン | 50〜74 | 中程度「準備ができています」 | Moderate |
| オレンジ | 25〜49 | 低「少しペースを落としましょう」 | Low |
| レッド | 1〜24 | 悪い「回復しましょう」 | Poor |
6つの要素と、見ている期間
要素は次の6つ。カッコ内は見ている範囲です。
- 昨晩の睡眠スコア(前の晩)
- リカバリータイム(前回の運動から残る回復時間)
- HRVステータス(7日平均が自分の基準値の範囲内か)
- 短期的負荷(1回の運動の影響は10日かけて薄れます。負荷の計算)
- 過去3日間の睡眠履歴(一晩よく寝ても、前3晩の不足は完全には消えません。睡眠と回復)
- 過去3日間のストレス履歴(起きている間のストレス)
公式が主な決定要因に挙げるのは、昨晩どれだけ眠れたかと、直近の運動から残る回復の必要量の2つ。各要素の重み(何%効くか)は公開されていないので、ネットで見る内訳はすべて推測です。
HRVが基準から外れる原因として、公式は回復不足や過大な負荷と並べてアルコールと、免疫が病気と戦っている状態を挙げています。飲み会の翌朝の低スコアは、時計の誤作動ではありません。
「無視していい?」への正直な答え
Garminユーザーの間では「レディネスは無視していい」という声が根強くあります。その感覚には根拠があります。公式自身が、レディネスはパフォーマンスを予測するために設計されたものではないと明言し、大事なレースの前夜に眠れなくても自己ベストを出す選手は多い、という例まで添えているからです。公式の立場は「データと自分の感覚を合わせて判断し、計画を調整する」。時計に従え、ではありません。
2016年、英国スポーツ医学ジャーナル(BJSM)の系統的レビューでは、主観的な指標のほうが客観的な指標より、訓練負荷の変化を敏感に反映していました。ただし睡眠不足の影響は本物で、27件をまとめた2024年のメタ分析では、朝方の睡眠を削ったときの落ち込みが、寝る時間を遅らせただけの場合よりはっきり大きく出ています(効果量−1.17 対 −0.25、後者は有意差なし)。
- 要素の明細で説明がつく低スコア(昨晩の睡眠が短い、前日のロング走の回復が残っている)は、従う価値あり。
- 説明がつかないのに体感は良い日は、練習を「飛ばす」のではなく「ずらす」。強度だけ落として心拍ゾーンをひとつ下げます。
- 要素に問題がないのにスコアだけ低いなら、次章のデータ校正の話です。
スコアが低いまま・1から動かないとき
「回復しない」「1のまま」は、故障より次の3つのどれかです。
- 校正が終わっていない:HRVの基準値は毎晩記録して約3週間かけて作られます。買ったばかりの時計には、比べる相手がありません。
- 睡眠データが入っていない:夜に外して充電すると、6要素のうち「昨晩の睡眠スコア」と「過去3日間の睡眠履歴」が欠けます。充電は入浴中など日中に。睡眠時間の目安は睡眠回復の計算で確認できます。
- 負荷が抜けていない:走行量が多い人は短期的負荷が常に高く、毎日低スコアが続きます。毎日同じ答えでは、情報量がありません。
3番目は、公式の見分け方が使えます。下げている要素が短期的負荷やリカバリータイムなら狙ってやっている負荷なので想定内、睡眠やストレスなら計画そのものを見直すサイン——と公式は書いています。リカバリータイムのカウントダウンが終わればスコアは戻るので、回復スケジュールから逆算したほうが早い日もあります。
表示されない・対応機種
「表示されない」ときは、故障を疑う前に次の3つを確認します。
- データカードの中に移動していないか:ソフトウェア更新で表示場所が変わっていたというユーザー報告が目立ちます。データカード一覧を最後まで送って確認します。
- パフォーマンスコンディションの設定がオフになっていないか:この設定が原因だったというユーザー報告もあります。設定のシステム項目から確認できます。
- そもそも非対応の機種でないか。
対応が確認できているのは Forerunner 265 / 955、fenix 7、epix (Gen 2)、Enduro 2 / 3、MARQ (Gen 2)、tactix 7 など。非対応は Venu 3、vivosmart 5、fenix 6 です。同じシリーズでも Venu 3 にはなく、Venu 4 には搭載されています。
Garmin自身が製品ページでの確認を案内しているとおり、この一覧は網羅ではありません。最終確認は公式のスペック表で。
証拠の詳細:引用した研究の中身と限界
主観と客観の比較は、Saw らの2016年 British Journal of Sports Medicine の系統的レビュー(DOI 10.1136/bjsports-2015-094758)。「主観的指標は、客観的指標より優れた感度と一貫性で、急性および慢性のトレーニング負荷を反映した」(日本語訳)と結論しています。
睡眠不足のメタ分析は Gong らの2024年(27研究・75指標、DOI 10.2147/nss.s467531)。全体の効果量は −0.56、有酸素持久力は −0.54。剥奪後の測定が午後だと −1.11、午前だと −0.30 と、測る時間帯でも差が出ています。
HRVを見ながら強度を決めるやり方を検証した試験もあります(da Silva ら2019年、DOI 10.1519/jsc.0000000000002001)。5kmのタイムはHRV群が −17.5±5.6%、計画どおり群が −14±4.7%。ただし被験者は未訓練の女性36名で、そのまま日常的に走っている人へ当てはめることはできません。
参考文献
- (2016). Monitoring the athlete training response: subjective self-reported measures trump commonly used objective measures: a systematic review. British Journal of Sports Medicine.
- (2019). Endurance Running Training Individually Guided by HRV in Untrained Women. Journal of Strength and Conditioning Research.
- (2024). Effects of Acute Sleep Deprivation on Sporting Performance in Athletes: A Comprehensive Systematic Review and Meta-Analysis. Nature and Science of Sleep.