走るなら:4×4は思ったより遅い(目安は10kmレースペース)
ランナーが4×4をペースで走るなら、中心は10kmレースのペース前後、5kmレースのペースが上限です。ネットでは「5kmペースで」「インターバル走のペースで」と書かれがちですが、それでは最大心拍数の90〜95%という枠を超えやすくなります。
RunDidaの計算(レース結果から出す走力の指数VDOTをもとにした値)では:
- 10km 50分前後(VDOT 40):キロ5分06秒〜4分50秒、中心4分58秒。10kmレースペースは5分00秒、5kmレースペースは4分49秒
- 10km 41分20秒前後(VDOT 50):キロ4分16秒〜4分02秒、中心4分09秒。10kmレースペースは4分08秒、5kmレースペースは3分59秒
トレッドミルなら傾斜1%で、VDOT 40は時速11.8〜12.4km、VDOT 50は時速14.1〜14.9kmです。10kmに60分以上かかる人は、中心が自分の10kmペースより少し速くなります(「約44分もつ速さ」を基準にしているため)。
個人差は速度で±3%(キロ約10秒)ほどあります。計算したペースは出発点で、最終的には4分の後半の心拍で合わせます。運動を始めたばかりでレース結果がない人や当てにならない人は、ペースより心拍数ときつさを優先してください。
なぜ5kmペースではなく10kmペースなのか
原典のHelgerud 2007は傾斜5.3%のトレッドミルで行われ、速度は報告されていません。そのためペースは心拍の枠から逆算するしかありません。
- 最大心拍数の90〜95%は、一定ペースで走り続けたときの最大酸素摂取量の約82〜90%に当たります(Swain 1994の対応関係から外挿)。
- 4分の中では心拍が遅れて上がるので、実際にはそれより少し速い速度が必要です。ダニエルズの曲線で「約70分〜約26分もつ速さ」に当たる範囲を採り、中心は約44分もつ速さにしました。
- 10kmレースの平均心拍は最大心拍数の約90%という報告があります(Selley 1995)。練習では同じ速さでもレースより心拍が低めに出ます(Lambert 1998)。
- 最大酸素摂取量が出る速さの95%で3分走ると、心拍は最大の98%まで上がったという研究もあり(Fleckenstein 2025)、これより速いと心拍の枠を超えます。
原典のやり方:4分×4本、3分のアクティブリカバリー
元になったのは、NTNU(ノルウェー科学技術大学)のHelgerudらが2007年に発表した研究です。
- ウォームアップ 約10分
- 4分:最大心拍数の90〜95%
- 3分:最大心拍数の約70%で軽く動き続ける(止まらない)
- これを4本。全体で約40分
- 週3回×8週間
対象は中程度に鍛えた健康な男性40人で、ランナーを集めた研究ではありません。4×4のグループは最大酸素摂取量が55.5から60.4 ml/kg/分に上がり、同じ仕事量を最大心拍数70%のゆっくりした運動や85%の運動でこなしたグループより、有意に大きく伸びました。
NTNUの研究グループが一般向けに出している案内では、強度は最大心拍数の85〜95%とやや幅広く、頻度は週2〜3回です。「4本終えてもう1本できそう」と感じる強さが目安とされています。
よく混ざる数字と誤解
- 「27人で46%向上」は心不全の患者を対象にしたWisløff 2007の研究の数字で、4×4の原典ではありません。
- 70〜77歳の1,567人を追ったGeneration 100研究(Stensvold 2020)では、高強度インターバル群の死亡率が中強度群の約半分という傾向が出ましたが、統計的に確かな差ではありませんでした。「4×4で寿命が延びると証明された」とは言えません。
- 原典では、同じ研究の中で15秒走・15秒回復の方法も試されています。ただ要旨には4×4との優劣の比較はありません。
1本目は心拍が追いつかない:4分の中での調整
1本目で心拍が目標に届かないのは普通です。心拍は運動の強さより遅れて上がるためで、原典でも「1〜1.5分で目標強度に達し、あとは速度を調整して維持する」という指示でした。NTNUの一般向け案内は、1本目は4分以内に90%へ届けば合格、2本目以降は1〜2分で届くのが目安としています。
- 1本目:最初の1〜1.5分は上限寄りで入り、そのあと中心のペースや負荷に戻す
- 3分目で95%を超えている:キロ5〜10秒落とす(バイクなら負荷を一段下げる)
- 2本目以降、3分目でも90%に届かない:少し上げる
- 3〜4本目:同じペースでも心拍がじわじわ上がるので、心拍数が90〜95%に収まるところまで少しペースを落とす
脚が先に限界になるのに心拍がなかなか上がらない場合、特にエアロバイクでは、手首の心拍計が実際より低く出ている可能性もあります(次の節)。
4分と3分の切り替えはインターバルタイマーに設定しておくと、画面を見続けずに済みます。
最大心拍数の決め方:年齢式は±11拍/分ずれる
4×4の強度はすべて「最大心拍数の何%」なので、最大心拍数がずれると目標も全部ずれます。この計算機は年齢から出すHUNT式を使います。
最大心拍数 = 211 − 0.64 × 年齢(ノルウェーの健康調査HUNTの3,320人のデータから作られた式、Nes 2013)
- 30歳:最大192拍/分、4分の目標173〜182、回復134
- 40歳:最大185拍/分、目標167〜176、回復130
- 50歳:最大179拍/分、目標161〜170、回復125
- 60歳:最大173拍/分、目標156〜164、回復121
- 70歳:最大166拍/分、目標149〜158、回復116
ただし推定の誤差の目安は約10.8拍/分で、同じ年齢でも10拍/分以上ずれる人は珍しくありません。実測値があれば「実測の最大心拍数」に入れてください。胸ストラップを着けて、坂道の全力走やレース終盤などで記録された最高値を使うのが現実的です。
手首の光学式心拍計は、胸ストラップより低めに出やすい点にも注意が必要です。Fitbit と Garmin を胸ストラップと比べた研究(Reddy 2018)では、トレッドミルのインターバルでは誤差が小さかった一方、エアロバイクの高強度インターバルでは平均11〜14%低く表示されました。スマートウォッチで最大心拍数がうまく測れないと感じる人は、胸ストラップを使うと解決することがあります。
回復の70%も最大心拍数に対する割合で、安静時心拍を使う計算(カルボーネン法)ではありません。ほかの推定式との比較は最大心拍数計算、ゾーン全体は心拍ゾーン計算で確認できます。
タバタ式でも、ダブルスレッショルドでもない
日本で「ノルウェー式HIIT」として紹介されるメニューには、原典と違うものが混ざっています。
- タバタ式(20秒全力+10秒休息×8回=4分)とは別物:4×4の4分は、最大心拍数の90〜95%を4分間続けて保つ時間です。中に20秒・10秒の刻みはありません。
- 回復は完全休息ではない:3分間、最大心拍数の約70%で動き続けます。4分休む、というのも原典とは違います。
- ランナーの間の「ノルウェー式トレーニング」は別の話:陸上中長距離のBakkenやIngebrigtsen兄弟で知られる、同じ日に閾値付近の練習を2回行う「ダブルスレッショルド」を指すことが多く、4×4とは強度も目的も違います。
ランナーにとってのもう一つの比較相手はヤッソ800です。
- ヤッソ800:800m×最大10本(4本から毎週1本ずつ増やす)。ペースは同じ走力の5kmレースペース前後で、フルマラソンの目標に合わせたスピード確認
- 4×4:4分×4本。中心は10kmレースペース前後で、心拍数で強度を管理する最大酸素摂取量づくり
両方を毎週入れる必要はありません。週1回のスピード練習の枠を、時期によってどちらかに使い分ければ十分です。
走らない4×4:エアロバイク・トレッドミル・坂道ウォーク
原典は傾斜のあるトレッドミルで行われ、強度はすべて心拍数で決めていました。走らない場合、この計算機は心拍数ときつさの目安だけを出します。
- トレッドミル(走る):平地のペースを使うなら傾斜1%に。原典は傾斜5.3%で、速度は各自の心拍に合わせて調整していました。
- エアロバイク:ペダルの負荷で心拍を合わせます。手首の心拍計は低く出やすいので、胸ストラップがおすすめです。
- 坂道ウォーク(トレッドミル):時速約5〜6.5km・傾斜8〜12%が、利用者の経験上の目安です(研究で決まった値ではありません)。走るのがつらい人の選択肢になります。
- 自宅:バーピーなど床に手をつく動きを4分続けると、手首や膝を痛めたという声があります(Yahoo!知恵袋 q14226257704)。自宅ならエアロバイクなど脚中心で強度を調整しやすい運動のほうが無理がありません。
始める前に確認したいこと:
- 心臓病のある人は医療機関の管理下で行うもので、この計算機の対象外です
- 運動習慣がない人、高齢の人、持病のある人は、始める前に医師に相談してください
- 最初はNTNU一般向け案内の下限寄り(最大心拍数の85〜90%)・週2回から。4本終えて「もう1本できそう」が残る強さにとどめます